皮膚疾患(アトピー性皮膚炎;AD)

治療症例

皮膚疾患(アトピー性皮膚炎;AD)

患者さんは、10才の柴犬。太ももを中心とした痒(かゆ)みと脱毛を主訴に来院されました。
3歳の頃より症状が認められ始めて、春から夏にかけて発症することが多いという事でした。
以前の病院で処方されていたステロイド剤を飲ませると数日のうちに痒み治まっていたということでした。

【診察】

左右の太ももから足先にかけて脱毛が広く認められました。
また、腹部と内股に皮膚の赤みと脱毛が認められました。

皮膚疾患

【診断】

アトピー性皮膚炎;AD
犬のアトピー性皮膚炎とは
定義:特徴的な臨床症状を示し、遺伝的な素因のある炎症性および掻痒性の皮膚疾患で、多くの場合環境抗原に対するIgE抗体に関連する。
⇒簡単に説明すると、皮膚のバリア機能の低下によって環境中の様々なアレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応して痒みが出る皮膚疾患である。現在、診断に主に用いられているのは下記の項目である。
① 犬のアトピー性皮膚炎の診断基準
1.3歳以下で発症 2.室内飼育 3.ステロイドに反応する痒み 4.他に皮膚症状のない痒み
5.前肢に症状がある 6.耳介に症状がある 7.耳介辺縁に症状がない 8.背部~腰部に症状がない
(5つの基準を満たした場合、アトピー性皮膚炎である可能性は85%である。)
② 特異的IgE測定検査

【診断基準の結果】

5つ該当

【特異的IgE検査結果、一部のみ記載】

特異的IgE検査結果

ハウスダストマイトに陽性を示しました。

【治療】

ステロイド剤は安価で即効性があるため一般の動物病院で汎用される傾向にありますが、長期的に服用することによって副腎皮質機能亢進症や糖尿病などを引き起こす可能性があるため飼い主さまと相談した結果、免疫抑制剤を使用しました。 免疫抑制剤は高価なお薬ですが、症状が改善したら徐々に投与量を減らすことができ、適正量を使用すれば副作用はほとんどない安全なお薬になります。

【経過】

最初の1ヶ月は毎日お薬を飲ませていましたが、痒みが落ち着いてきたので、投薬の間隔を徐々に空けていき今では、1週間に2回の内服で良好に維持しています。 初診より約2ヶ月でほぼ正常な状態まで改善しています。(下の写真)

治療経過