消化器疾患(異物による小腸閉塞)

治療症例

消化器疾患(異物による小腸閉塞)

患者さんは、約9ヶ月齢の日本猫で、来院の前日から1日20回以上という、激しい嘔吐を主訴に来院されました。
この猫ちゃんは以前から遊びながら様々なものを飲み込んでしまうことがあり、空腹時に吐くという症状の認められた数ヶ月前と同時期にネズミのおもちゃの紛失に気づかれていました。

 

【診察】

血液検査を行いましたが、特に異常はありませんでした。
腹部中央付近を触診すると非常に嫌がりました。
レントゲン検査では胃から十二指腸のガス貯留を中程度に認め、その部位に胃腸の運動性の低下が考えられましたが、明らかな異物は写りませんでした。
しかし、これまでの診察から異物摂食の可能性が高いためすぐにバリウム検査を行いました。
その結果、小腸から先にバリウムがほとんど進まないため閉塞が疑われました。

消化器疾患 レントゲン写真

 

【診断】

小腸閉塞 (原因として異物摂食を疑う)

 

【治療】

異物が原因である小腸閉塞が強く疑われたため、飼い主様のご了承を頂き、バリウム検査後すぐに開腹手術を行いました。空腸において、閉塞した異物を認めました。
閉塞部の腸管は血管の充血は認められたものの、比較的良好な状態であったため、腸切開術にて異物を摘出しました。摘出された異物はやはりネズミ型のおもちゃでした。

治療写真

 

【経過】

術後は2日間絶食絶水で点滴治療を行いました。
術後3日目に再度バリウム検査を行い、手術部位の漏れが無いか確認し、問題なかったため、食事を開始しました。
経過は順調で術後5日目に退院されました。

 

【考察】

今回の症例は若く元気な子が急激に激しい嘔吐を呈する、しかも普段から色々なものを飲み込むくせがあるという典型的な異物による腸閉塞で認められるヒストリーの症例でした。そのため、比較的迅速に検査から診断、手術を行うことができました。今回、飼い主様は症状がでて、すぐに来院して頂いたため閉塞していた腸の状態も良好で、手術後の経過も順調でした。しかし、これが後2、3日遅れると腸穿孔を起こして腹膜炎を起こす可能性もあったと思われます。迅速な処置が大切ですので異物を飲み込んだかもしれないときはすぐに病院にご相談ください。