消化管の内視鏡検査
内視鏡検査の特徴について
消化管の内視鏡検査・処置の一番の特徴は動物の体に傷を付けずに消化管内部の観察、治療を行えることです。今までは消化管内部という場所は開腹手術を行い、さらに胃や腸管を切開してみないと手の届かない部分でしたが、内視鏡を用いることにより、動物の体に傷を付けずに様々な検査や治療を行うことができるようになりました。開腹手術では3-4日間の入院が必要であった腸管の処置でも内視鏡により日帰りで実施することのできる症例も増えてきました。
当院ではCCDカメラでのデジタル内視鏡システムを導入し、より鮮明な画像での消化管の観察が出来るようになり、各種の内視鏡検査・処置に対応しております。
約5mm、8mm、10mmの直径の内視鏡を導入することで、鼻腔や食道、胃、十二指腸、小腸、大腸など幅広い部分の観察と猫から小型犬や大型犬のような様々な体格の動物の検査・治療を行うことが可能です。
実際の当院で実施している内視鏡で行える検査や治療についてご紹介したいと思います。
内視鏡による消化管内異物摘出
犬や猫で様々な異物(布、ひも、石、植物の種、おもちゃ、プラスチック、ビニールなど消化できない物や 人用の飲み薬、骨、おやつジャーキーを丸呑みするetc.)の誤食は比較的よく認められます。異物がうまく便に排出されれば良いのですが、異物の形や大きさによっては排出されず、胃の中にずっと残ってしまい慢性的な嘔吐を引き起こしたりするケースや、飲み込んでしまった異物が腸の中を流れていく途中で詰まって腸閉塞を起こし、腸穿孔や腹膜炎を起こすような重篤なケースもあります。したがって、異物を誤食してしまった場合には迅速な検査と処置が重要になります。
異物除去に内視鏡での処置を行うことにより、手術でお腹や胃腸を切ることなく、動物の体を傷つけずに少ない負担で異物摘出を行うことができます。
実際の処置例
症例1
犬、2日前に梅干しの種を飲み込んでしまい、様子を見ていたが便に出てこないため心配になって来院されました。レントゲン検査で胃に異物を認めたため、内視鏡検査を行い、胃内の梅干しの種を摘出しました。
症例2
猫、急に食欲なくなり、3日間嘔吐が続いている。異物を飲み込んだかはわからないということでした。
内視鏡検査を行い、十二指腸でプラスチック製のふたによる閉塞を確認。そのまま内視鏡用の鉗子で摘出しました。同日、日帰りで帰宅し食欲と嘔吐症状は改善しました。